リズムが異なる歌詞の節

しばしば、1 つの歌で歌詞の節によって歌詞を旋律に配置する仕方が若干異なる場合があります。そのような変化も \lyricsto で対応することができます。

メリスマを無視する

歌詞のある節ではメリスマになっているものが、他の節では複数の音節に分かれている場合があります。これを実現するには、複数音節に分かれるボイスはメリスマを無視するようにします。これは Lyrics コンテキストの中で ignoreMelismata を設定します。

<<
  \relative \new Voice = "lahlah" {
    \set Staff.autoBeaming = ##f
    c'4
    \slurDotted
    f8.[( g16])
    a4
  }
  \new Lyrics \lyricsto "lahlah" {
    more slow -- ly
  }
  \new Lyrics \lyricsto "lahlah" {
    go
    \set ignoreMelismata = ##t
    fas -- ter
    \unset ignoreMelismata
    still
  }
>>

[image of music]

既知の問題と警告

たいていの \set コマンドとは異なり、\set ignoreMelismata は前に \once があると機能しません。メリスマを無視させる歌詞の範囲を \set\unset で囲む必要があります。

装飾小音符に音節を割り当てる

デフォルトでは、\lyricsto を用いても装飾小音符 (つまり、\grace) には音節は割り当てられません。しかしながら、この振る舞いを変更することができます:

<<
  \new Voice = melody \relative {
    f'4 \appoggiatura a32 b4
    \grace { f16 a16 } b2
    \afterGrace b2 { f16[ a16] }
    \appoggiatura a32 b4
    \acciaccatura a8 b4
  }
  \new Lyrics
  \lyricsto melody {
    normal
    \set includeGraceNotes = ##t
    case,
    gra -- ce case,
    after -- grace case,
    \set ignoreMelismata = ##t
    app. case,
    acc. case.
  }
>>

[image of music]

既知の問題と警告

associatedVoice と同様に、includeGraceNotes は少なくとも装飾小音符に割り当てる音節よりも前に設定する必要があります。装飾小音符が音楽の始めにある場合は、\with または \context ブロックを使うことを検討してください:

<<
  \new Voice = melody \relative c' {
    \grace { c16( d e f }
    g1) f
  }
  \new Lyrics \with { includeGraceNotes = ##t }
  \lyricsto melody {
    Ah __ fa
  }
>>

[image of music]

代替の旋律に切り替える

音楽への歌詞の割り当て方をもっと複雑に変化させることができます。associatedVoice プロパティを設定することで、歌詞の中で歌詞を割り当てる旋律を変更することができます:

<<
  \relative \new Voice = "lahlah" {
    \set Staff.autoBeaming = ##f
    c'4
    <<
      \new Voice = "alternative" {
        \voiceOne
        \tuplet 3/2 {
          % show associations clearly.
          \override NoteColumn.force-hshift = #-3
          f8 f g
        }
      }
      {
        \voiceTwo
        f8.[ g16]
        \oneVoice
      } >>
    a8( b) c
  }
  \new Lyrics \lyricsto "lahlah" {
    Ju -- ras -- sic Park
  }
  \new Lyrics \lyricsto "lahlah" {
    % トリック: associatedVoice を 1 音節早く設定する必要があります!
    \set associatedVoice = "alternative" % "ran" に適用されます
    Ty --
    ran --
    no --
    \set associatedVoice = "lahlah" % "rus" に適用されます
    sau -- rus Rex
  } >>

[image of music]

歌詞の 1 番のテキストは通常の方法で旋律 ‘lahlah’ に割り当てられます。しかしながら、歌詞の 2 番は最初は lahlah コンテキストに割り当てられていますが、音節 ‘ran’ から ‘sau’ までの割り当てが旋律 alternative に切り替わります:

\set associatedVoice = "alternative" % "ran" に適用されます
Ty --
ran --
no --
\set associatedVoice = "lahlah" % "rus" に適用されます
sau -- rus Rex

ここで、alternative は 3 連符を保持している Voice コンテキストの名前です。

\set associatedVoice コマンドの配置に注意してください – 1 音節早く出現していますが、これで正しく機能します。

Note: \set associatedVoice コマンドは、割り当てが新しいボイスに切り替わる音節の前に配置する必要があります。言い換えると、ボイスの変更は予想よりも 1 音節遅く発生します。これは技術的な理由によるものであり、バグではありません。


LilyPond 記譜法リファレンス v2.25.21 (開発版).