1.2.4 連桁


自動連桁

デフォルトでは、連桁は自動的に挿入されます:

\relative c'' {
  \time 2/4 c8 c c c
  \time 6/8 c8 c c c8. c16 c8
}

[image of music]

自動的に決定される連桁が満足いかないものである場合、明示的に連桁を挿入することが可能です – 手動連桁 を参照してください。連桁を休符の上まで伸ばそうと意図しているのなら、連桁を手動で挿入する 必要があります

自動連桁を必要としない場合、\autoBeamOff で off にすることができ、\autoBeamOn で on にすることができます:

\relative c' {
  c4 c8 c8. c16 c8. c16 c8
  \autoBeamOff
  c4 c8 c8. c16 c8.
  \autoBeamOn
  c16 c8
}

[image of music]

Note: 歌曲の中でメリスマを表すために連桁を使用する場合、\autoBeamOff で自動連桁を off にして、手動で連桁を示すべきです。\partCombine\autoBeamOff と一緒に用いると予期しない結果になる可能性があります。詳細はコード断片集を参照してください。

自動的に挿入されるデフォルトの連桁とは異なるパターンの連桁を作成することができます – 自動連桁の振る舞いを設定する を参照してください。

定義済みコマンド

\autoBeamOff, \autoBeamOn

Selected Snippets

改行に跨る連桁

連桁が小節線を跨ぐ場合、改行は通常禁止されます。この挙動は以下のようにして変更することができます。

\relative c'' {
  \override Beam.breakable = ##t
  c8 c[ c] c[ c] c[ c] c[ \break
  c8] c[ c] c[ c] c[ c] c
}

[image of music]

向きの変わる連桁が作られる符頭間の距離を変更する

向きが変わる連桁は、符頭と符頭が大きく離れている場合に自動的に作られます。この挙動は auto-knee-gap プロパティで調整することができます。符頭間の距離が auto-knee-gap と連桁オブジェクトの幅を[c 足したものよりも大きい場合に、向きの変わる連桁が作られます (連桁オブジェクトの幅は、音符の長さや、連桁の傾きによって異なります)。デフォルトでは、auto-knee-gap は 5.5 譜スペースにセットされています。

{
  f8 f''8 f8 f''8
  \override Beam.auto-knee-gap = #6
  f8 f''8 f8 f''8
}

[image of music]

partCombine と autoBeamOff

\partCombine と共に \autoBeamOff を使用した場合の挙動は理解しづらいです。

譜全体で自動連桁をオフにするために、代わりに以下を用いたほうが良いです:

\set Staff.autoBeaming = ##f

\partCombine は 3 種類のボイスを作り出します – 符幹が上向きの単一ボイス、符幹が下向きの単一ボイス、パート結合が行われたボイスです。

\autoBeamOff\partCombine の 1 つ目の引数の中で用いた場合、符幹が上向きのボイスか、結合されたボイスのどちらかの、現在アクティブな方に適用されます。\autoBeamOff が 2 つ目の引数の中で用いられた場合、符幹が下向きのボイスに適用されます。

\partCombine の中で全ての自動連桁をオフにするために \autoBeamOff を用いるためには、3 回呼び出しを行う必要があります。

{
  %\set Staff.autoBeaming = ##f % turns off all autobeaming
  \partCombine
  {
    \autoBeamOff % applies to split up stems
    \repeat unfold 4 a'16
    %\autoBeamOff % applies to combined up stems
    \repeat unfold 4 a'8
    \repeat unfold 4 a'16
  }
  {
    \autoBeamOff % applies to down stems
    \repeat unfold 4 f'8
    \repeat unfold 8 f'16 |
  }
}

[image of music]

参照

記譜法リファレンス: 手動連桁, 自動連桁の振る舞いを設定する.

インストールされているファイル: ‘scm/auto-beam.scm

コード断片集: Rhythms

内部リファレンス: Auto_beam_engraver, Beam_engraver, Beam, BeamEvent, BeamForbidEvent, beam-interface, unbreakable-spanner-interface

既知の問題と警告

連桁のプロパティは連桁構築の開始時に決定され、その後から連桁の完了までの間に追加された連桁プロパティの変更は 次の 連桁から影響を与えます。


自動連桁の振る舞いを設定する

自動連桁が有効な場合、連桁の配置は以下の 3 つのコンテキスト プロパティによって決定されます: baseMoment, beatStructure, beamExceptions。これらの値は以下で示すようにオーバライドすることができますが、拍子 で説明しているように、デフォルトの値そのものを変更することもできます。

beamExceptions が現在の拍子記号に対して定義されている時、そのルールのみが連桁の配置の決定に使用されます。 baseMomentbeatStructure の値は使用されません。

beamExceptions が現在の拍子記号に対して定義されていない時、baseMomentbeatStructure の値によって連桁の配置が決定されます。

baseMomentbeatStructure による連桁

デフォルトで、非常によく使われる拍子に対しては beamExceptions のルールが定義されているため、自動連桁に baseMomentbeatStructure の値を使用させるためには、beamExceptions のルールを無効化しなければいけません。beamExceptions はこのようにして無効化します:

\set Timing.beamExceptions = #'()

beamExceptions#'() にセットされた場合 (明示的にセットされた場合と、現在の拍子記号に対してルールが定義されていない場合の両方を含みます)、連桁の終了点は baseMomentbeatStructure コンテキスト プロパティで指定された拍に従います。beatStructure は小節内の各拍の長さが baseMoment の単位で定義された Scheme リストです。デフォルトでは、baseMoment は 1/拍子の分母です。

beatStructurebaseMoment の値はそれぞれの拍子記号に対して別々に存在するということに注意してください。これらの値を変更しても、影響が及ぶのは現在有効な拍子記号に対してのみです。そのため、これらの変更は新しい拍子記号のセクションが始まる \time コマンドの前ではなく後に置かれなければいけません。ある拍子記号に与えられた新しい値は記憶されており、その拍子記号が新たに出現した際に再び有効になります。

\relative c'' {
  \time 5/16
  c16^"default" c c c c |
  % beamExceptions は 5/16 の拍子については定義されていないようですが、
  % 念のために無効にしておきましょう
  \set Timing.beamExceptions = #'()
  \set Timing.beatStructure = 2,3
  c16^"(2+3)" c c c c |
  \set Timing.beatStructure = 3,2
  c16^"(3+2)" c c c c |
}

[image of music]

\relative {
  \time 4/4
  a'8^"default" a a a a a a a
  % beamExceptions は 4/4 に対しては明らかに定義されているため、
  % これを無効にします
  \set Timing.beamExceptions = #'()
  \set Timing.baseMoment = #(ly:make-moment 1/4)
  \set Timing.beatStructure = 1,1,1,1
  a8^"changed" a a a a a a a
}

[image of music]

連桁の設定変更をある特定のテキストに限定することができます。下位コンテキストに連桁の設定が含まれない場合、そのコンテキストを囲んでいる上位コンテキストの設定が適用されます。

\new Staff {
  \time 7/8
  % beamExceptions は 7/8 に対しては定義されていないため
  % 無効にする必要はありません
  \set Staff.beatStructure = 2,3,2
  <<
    \new Voice = one {
      \relative {
        a'8 a a a a a a
      }
    }
    \new Voice = two {
      \relative {
        \voiceTwo
        \set Voice.beatStructure = 1,3,3
        f'8 f f f f f f
      }
    }
  >>
}

[image of music]

譜で複数のボイスが使用されている場合に連桁設定を譜のすべてのボイスに適用するには、Staff コンテキストで設定を行う必要があります:

\time 7/8
% リズム 3-1-1-2
% デフォルトで連桁設定の変更は Voice に適用され、うまくいきません
% なぜなら、自動生成されるボイスで、すべての拍は baseMoment (1 . 8) だからです
\set beatStructure = 3,1,1,2
<< \relative {a'8 a a a16 a a a a8 a} \\ \relative {f'4. f8 f f f} >>

% コンテキスト Staff を指定するとうまくいきます
\set Staff.beatStructure = 3,1,1,2
<< \relative {a'8 a a a16 a a a a8 a} \\ \relative {f'4. f8 f f f} >>

[image of music]

baseMoment の値を調整することで、連桁の振る舞いを変更することができます。baseMoment の値を変更した場合、beatStructure に新しい baseMoment と矛盾しない値を設定する必要があります。

\time 5/8
% beamExceptions は 5/8 に対しては定義されていないため
% 無効にする必要はありません
\set Timing.baseMoment = #(ly:make-moment 1/16)
\set Timing.beatStructure = 7,3
\repeat unfold 10 { a'16 }

[image of music]

beatLengthmoment – 演奏時間の単位 – です。タイプ moment の量は Scheme 関数 ly:make-moment によって作り出されます。この関数についての更なる情報は 時間管理 を参照してください。

デフォルトでは、baseMoment には「1/拍子の分母」がセットされています。このデフォルトの例外は ‘scm/time-signature-settings.scm’ で見つかります。

beamExceptions に基づいた連桁

特殊な自動連桁規則 (連桁の終わりが拍に従わないもの) はプロパティ beamExceptions に定義します。

beamExceptions の値は – 少し複雑な Scheme データ構造ですが – は、 \beamExceptions 関数によって非常に簡単に生成できます。この関数には 1 つ以上の手動連桁を含む、小節の長さのリズムパターンを与えます (小節は小節チェック記号 | で分割されている必要があります。この関数では他に小節の長さを識別する方法が無いためです)。簡単な例を示します:

\relative c'' {
  \time 3/16
  \set Timing.beatStructure = 2,1
  \set Timing.beamExceptions =
    \beamExceptions { 32[ 32] 32[ 32] 32[ 32] }
  c16 c c |
  \repeat unfold 6 { c32 } |
}

[image of music]

Note: beamExceptions の値は 完全な 例外リストである必要があります。つまり、その設定には適用されるべき例外がすべて含まれている必要があります。例外の 1 つだけを追加、削除、変更することはできません。このことは扱い難いように思えるかもしれませんが、新しい連桁パターンを指定する際に現在の連桁設定を知る必要がないということを意味します。

拍子が変更されると、Timing.baseMoment, Timing.beatStructure, それに Timing.beamExceptions のデフォルト値が設定されます。拍子を設定すると、その Timing コンテキストの自動連桁設定はデフォルトの振る舞いにリセットされます。

\relative a' {
  \time 6/8
  \repeat unfold 6 { a8 }
  % (4 + 2) にグループ化します
  \set Timing.beatStructure = 4,2
  \repeat unfold 6 { a8 }
  % デフォルトの振る舞いに戻ります
  \time 6/8
  \repeat unfold 6 { a8 }
}

[image of music]

ある拍子に対するデフォルトの自動連桁設定は ‘scm/beam-settings.scm’ の中で決定されます。ある拍子に対する自動連桁のデフォルト設定を変更する方法は 拍子 で説明しています。

ある拍子に対する自動連桁設定の多くには beamExceptions が登録されています。例えば、4/4 拍子は 16 分音符しかない小節を 2 つの連桁で囲もうとします。beamExceptions がリセットされていなければ、beamExceptions 規則は beatStructure 設定をオーバライドすることができます。

\time 4/4
\set Timing.baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
\set Timing.beatStructure = 3,3,2
% 以下は beamExceptions のため、(3 3 2) の連桁にはなりません
\repeat unfold 8 {c''8} |
% 以下は beamExceptions をクリアするため、(3 3 2) の連桁になります
\set Timing.beamExceptions = #'()
\repeat unfold 8 {c''8}

[image of music]

同様に、3/4 拍子はデフォルトで 8 分音符しかない小節を 1 つの連桁で囲みます。3/4 拍子の 8 分音符に拍毎の連桁を付けるには、beamExceptions をリセットします。

\time 3/4
% beamExceptions により、デフォルトで (6) の連桁を付けます
\repeat unfold 6 {a'8} |
% beatLength により、これは (1 1 1) の連桁を付けます
\set Timing.beamExceptions = #'()
\repeat unfold 6 {a'8}

[image of music]

ロマン派や古典派時代の譜刻では、3/4 拍子の小節の途中から連桁が始まることがありますが、誤った 6/8 拍子の印象を与えるため現代の習慣では用いません (Gould の 153 ページを参照してください)。3/8 拍子でも同様の状況が発生します。この振る舞いはコンテキスト プロパティ beamHalfMeasure によって制御されます – これは分子が 3 の拍子記号の場合にのみ効果を持ちます:

\relative a' {
  \time 3/4
  r4. a8 a a |
  \set Timing.beamHalfMeasure = ##f
  r4. a8 a a |
}

[image of music]

自動連桁はどのように機能するのか

自動連桁が有効である場合、自動連桁の配置はコンテキスト プロパティ baseMoment, beatStructure, それに beamExceptions によって決定されます。

連桁の配置を決定する際、以下の規則が並び順の優先度で適用されます:

上記の規則で、連桁タイプ は連桁でグループ化された音符の最短演奏時間です。

デフォルトの連桁規則は ‘scm/time-signature-settings.scm’ の中にあります。

Selected Snippets

連桁を細分する

16 分音符 (あるいはそれより短い音符) の連桁は、デフォルトでは細分されません。つまり、3 つ以上の音符全体が分かれることなく平等に連桁で繋がれます。この挙動は、subdivideBeams プロパティをセットすることで、連桁を細分するように変更することができます。このプロパティがセットされると、連桁が現在の baseMoment の間隔で細分されて表示されるようになります。分割された後の音符全体の長さが分割長より短い (不完全な連桁) 場合は、連桁の本数は可能な最長分割グループが基になります。しかし、分割された後の音符が 1 つしか存在しない場合、この制限は適用されません。 baseMoment は、明示的にセットされなければ、現在の拍子記号の分母分の 1 に設定されます。baseMoment は、このスニペットのように ly:make-moment 関数を用いて、連桁を分割する単位となる長さを分数で指定する必要があります。また、baseMoment が変更された場合、beatStructure も新たな baseMoment に合わせて変更する必要があります:

\relative c'' {
  c32[ c c c c c c c]
  \set subdivideBeams = ##t
  c32[ c c c c c c c]

  % Set beam sub-group length to an eighth note
  \set baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
  \set beatStructure = 2,2,2,2
  c32[ c c c c c c c]

  % Set beam sub-group length to a sixteenth note
  \set baseMoment = #(ly:make-moment 1/16)
  \set beatStructure = 4,4,4,4
  c32[ c c c c c c c]

  % Shorten beam by 1/32
  \set baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
  \set beatStructure = 2,2,2,2
  c32[ c c c c c c] r32

  % Shorten beam by 3/32
  \set baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
  \set beatStructure = 2,2,2,2
  c32[ c c c c] r16.
  r2
}

[image of music]

厳密な拍に基づく連桁

16 分音符以下の連桁の向きは、音符が属する拍に基づいて決定することができます。最初の連桁では突き出るものが避けられ (デフォルト)、次の連桁は拍に厳密に従います。

\relative c'' {
  \time 6/8
  a8. a16 a a
  \set strictBeatBeaming = ##t
  a8. a16 a a
}

[image of music]

小節のグループ化記号

小節内の拍のまとまりは、beatStructure コンテキスト プロパティによりコントロールされます。beatStructure の値はscm/time-signature-settings.scm に、多くの拍子記号に対して設定されています。beatStructure の値は、\set で変更することができます。あるいは、\time を拍子記号と beatStructure の明示的な変更のために用いることができます。そのためには、拍子記号の前に小節内部の拍のグループを数値のリストで (Scheme の構文で) 与えます。

\timeTiming コンテキストに適用されるため、Voice のような他のより低いレベルのコンテキストにセットされた beatStructurebaseMoment の値を上書きしません。

Measure_grouping_engraver がコンテキストに含まれている場合、拍のグループを示す記号が表示されます。この記号はリズムが複雑な現代音楽を読みやすくします。この例では、9/8 の小節が 2 つの方法で 2 つのパターンにグループ化されています。5/8 は scm/time-signature-settings.scm のデフォルト設定を用いています。

\score {
  \new Voice \relative c'' {
    \time 9/8
    g8 g d d g g a( bes g) |
    \set Timing.beatStructure = 2,2,2,3
    g8 g d d g g a( bes g) |
    \time 4,5 9/8
    g8 g d d g g a( bes g) |
    \time 5/8
    a4. g4 |
  }
  \layout {
    \context {
      \Staff
      \consists "Measure_grouping_engraver"
    }
  }
}

[image of music]

Score コンテキストでの自動連桁

Score コンテキストに設定された自動連桁の設定は全ての譜に適用されますが、StaffVoce レベルで設定することもできます。

\relative c'' {
  \time 5/4
  % Set default beaming for all staves
  \set Score.baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
  \set Score.beatStructure = 3,4,3
  <<
    \new Staff {
      c8 c c c c c c c c c
    }
    \new Staff {
      % Modify beaming for just this staff
      \set Staff.beatStructure = 6,4
      c8 c c c c c c c c c
    }
    \new Staff {
      % Inherit beaming from Score context
      <<
        {
          \voiceOne
          c8 c c c c c c c c c
        }
        % Modify beaming for this voice only
        \new Voice {
          \voiceTwo
          \set Voice.beatStructure = 6,4
          a8 a a a a a a a a a
        }
      >>
    }
  >>
}

[image of music]

参照

記譜法リファレンス: 拍子

インストールされているファイル: ‘scm/time-signature-settings.scm

コード断片集: Rhythms

内部リファレンス: Auto_beam_engraver, Beam, BeamForbidEvent, beam-interface

既知の問題と警告

自動連桁が終了しておらず、まだ音符を受け付けている最中に楽譜が終了する場合、その最後の連桁はまったく譜刻されません。<< … \\ … >> で入力される多声ボイスでも同様です。自動連桁がまだ音符を受け付けている最中に多声ボイスが終了する場合、その最後の連桁はまったく譜刻されません。ボイスや楽譜の最後の連桁には手動で連桁を付けることにより、これらの問題を回避できます。

デフォルトでは、Timing コンテキストは Score コンテキストにエイリアスされています。このことは、ある譜で拍子の設定を行うと、他の譜での連桁の付け方にも影響を与えると言うことを意味します。このため、後で出てくる譜で拍子の設定を行うと、前にある譜でセットしたカスタム連桁はリセットされます。この問題を回避する方法の 1 つは、拍子の設定は 1 つの譜でしか行わないことです。

<<
  \new Staff {
    \time 3/4
    \set Timing.baseMoment = #(ly:make-moment 1/8)
    \set Timing.beatStructure = 1,5
    \set Timing.beamExceptions = #'()
    \repeat unfold 6 { a'8 }
  }
  \new Staff {
    \repeat unfold 6 { a'8 }
  }
>>

[image of music]

拍子に対するデフォルトの連桁設定を変更することで、常にお望みの連桁を使うこともできます。ある拍子に対する自動連桁設定を変更する方法は 拍子 で説明しています。

<<
  \new Staff {
    \overrideTimeSignatureSettings
      3/4               % timeSignatureFraction
      1/8               % baseMomentFraction
      1,5               % beatStructure
      #'()		% beamExceptions
    \time 3/4
    \repeat unfold 6 { a'8 }
  }
  \new Staff {
    \time 3/4
    \repeat unfold 6 { a'8 }
  }
>>

[image of music]


手動連桁

自動連桁アルゴリズムをオーバライドする必要がある場合もあります。例えば、自動連桁は休符や小節線を越えて連桁を配置することはなく、合唱譜では連桁はしばしば音符ではなく歌詞の韻律に従って配置されます。そのような連桁は [] で開始点と終了点を記すことによって手動で指定することができます:

\relative { r4 r8[ g' a r] r g[ | a] r }

[image of music]

方向指示子を用いることで、連桁の向きを手動で設定することができます:

\relative { c''8^[ d e] c,_[ d e f g] }

[image of music]

連桁でつながれないようにするために、個々の音符には \noBeam が記されるかもしれません:

\relative {
  \time 2/4
  c''8 c\noBeam c c
}

[image of music]

装飾小音符の連桁と通常の音符の連桁は同時進行で発生します。通常の音符の連桁の途中に、連桁でつながれない装飾小音符は配置されません。

\relative {
  c''4 d8[
  \grace { e32 d c d }
  e8] e[ e
  \grace { f16 }
  e8 e]
}

[image of music]

プロパティ stemLeftBeamCountstemRightBeamCount をセットすることによって連桁をさらに厳密に手動制御することが可能です。これらの値はそれぞれ、次の音符の左側と右側に描く連桁の本数を指定します。どちらかのプロパティがセットされている場合、その値は 1 度だけ使用され、それから消去されます。以下の例では、最後の f は左側に連桁を 1 本だけ持って – すなわち、グループ全体をつなげている 8 分音符の連桁を持って – 譜刻されています。

\relative a' {
  a8[ r16 f g a]
  a8[ r16
  \set stemLeftBeamCount = #2
  \set stemRightBeamCount = #1
  f16
  \set stemLeftBeamCount = #1
  g16 a]
}

[image of music]

定義済みコマンド

\noBeam

Selected Snippets

水平な符尾とはみ出す連桁

単一の音符に出現する連桁や、端がはみ出す連桁は、stemLeftBeamCount, stemRightBeamCount と連桁指示 [] を組み合わせることで作ることができます。

単一の音符で、右側にのみはみ出す連桁については、音符に [] を付加し、stemLeftBeamCount を 0 にします (Example 1 を参照)。

左側にのみはみ出す場合は、代わりに stemRightBeamCount を 0 にします (Example 2)。

複数音符の連桁で、右側にはみ出す場合は、stemRightBeamCount を正の値にします。左側にはみ出す場合は、stemLeftBeamCount を正の値にします (Example 3)。

休符に囲まれた単一の音符では、両方向にはみ出した連桁を表示したほうが分かりやすい場合があります。これは連桁指示 [] のみで実現できます (Example 4)。

(注意: \set stemLeftBeamCount は常に \once \set と同等です。つまり、連桁の本数は“保持されず”、最後の例における 16[] の音符はその前の \set に影響されません。)

\score {
  <<
    % Example 1
    \new RhythmicStaff {
      \set stemLeftBeamCount = #0
      c16[]
      r8.
    }
    % Example 2
    \new RhythmicStaff {
      r8.
      \set stemRightBeamCount = #0
      16[]
    }
    % Example 3
    \new RhythmicStaff {
      16 16
      \set stemRightBeamCount = #2
      16 r r
      \set stemLeftBeamCount = #2
      16 16 16
    }
    % Example 4
    \new RhythmicStaff {
      16 16
      \set stemRightBeamCount = #2
      16 r16
      16[]
      r16
      \set stemLeftBeamCount = #2
      16 16
    }
  >>
}

[image of music]

参照

記譜法リファレンス: 向きと配置, 装飾小音符

コード断片集: Rhythms

内部リファレンス: Beam, BeamEvent, Beam_engraver, beam-interface, Stem_engraver


羽状の連桁

羽状の連桁は、楽曲全体のテンポを変えることなく、音符の小さなグループをテンポを上げながら (あるいは下げながら) 演奏すべきであることを示すために使用されます。羽状連桁の範囲は [] を使って手動で指定する必要があり、連桁の羽は Beam のプロパティ grow-direction に向きを指定することによって調整することができます。

音符の配置と MIDI 出力での音が羽状連桁によって指示された ritardando (徐々に緩やかに) や accelerando (次第に速く) を反映すべきであるのなら、音符は波括弧で区切られた音楽表記としてグループ化される必要があり、さらに、そのグループの最初の音符と最後の音符の演奏時間の比率を指定する featheredDurations コマンドを前に置く必要があります。

角括弧は連桁の範囲を示し、波括弧は演奏時間を変更される音符はどれなのかを示します。通常これら 2 つは同じ音符のグループを囲みますが、同じであることは必須ではありません: 2 つのコマンドは独立しています。

以下の例では、8 つの 16 分音符は 2 分音符とまったく同じ時間を占めますが、最初の音符の長さは最後の音符の長さの半分であり、中間の音符は徐々に長くなります。最初の 4 つの 32 分音符は徐々にスピード アップしますが、最後の 4 つの 32 分音符は一定のテンポです。

\relative c' {
  \override Beam.grow-direction = #LEFT
  \featherDurations 2/1
  { c16[ c c c c c c c] }
  \override Beam.grow-direction = #RIGHT
  \featherDurations 2/3
  { c32[ d e f] }
  % revert to non-feathered beams
  \override Beam.grow-direction = #'()
  { g32[ a b c] }
}

[image of music]

譜刻される音符の間隔は音符の演奏時間を近似的に表しているだけですが、MIDI 出力での演奏時間は正確です。

定義済みコマンド

\featherDurations

参照

コード断片集: Rhythms

既知の問題と警告

\featherDurations は非常に短い音楽コード断片に対してだけ、そして分数の数が小さいときにだけ機能します。


LilyPond — 記譜法リファレンス v2.24.4 (安定版).